コンテンツのサムネイル

意外と当然

2026/01/28

福田六個

特別な日だったと話すにつれてあの日の僕は別人だった

カラオケで泣いた日の腫れた目の写真消したふりしてまだ持っている

方便が雲のかたちを取るときにあればちがったインスタントカメラ

友だちの助力があれば観てられる笑ってられるお笑い番組

五話まではよかったという興奮のあとでふたりはドラマをつくる

助手席にいつでもあった円筒をはじめて言葉で指した気がする

遠出するとみんなだんだん口ずさむ海のうた、海鳥たちのうた

本とイヤホンかさばる腕にいまひとつ感覚がない、真冬の朝の

はずらしいはずだったらしい望遠鏡の首の可動域を確かめる

0点の変顔として笑われる未来が2秒後には来ている

飛行機も新幹線も仕舞われて、一人が欲しい気分で、夜で、

航空券が安く取れたらその時また 駅を出てターミナルを渡った

煙草をねだると文句を言ってくる人は珍しい ああ、嬉しそうだ

べたべたの髪にさわって一日をきちんと過ごせた、疲れた、と思う

赤ん坊だった頃からこうだったとか遠い声ばかりするから

そこまでの雪国でなく熱湯でほどけた髪をすっかり撫でた

担任の教師が有給を取っていたっぽいなと気づく風邪ぎみの夜

思えばあの頃は暗かったと冬になるとなぜか決まって言う

さかのぼる写真のなかのパーマってひよわで、ともすれば褒められて

どうしても避けられないで指切りをした夜はどれもたのしかった

『つくば集』第五号所収