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春のお祈り、まばたき眠い日くもりのスペクタクル

2025/08/12

緑川すに

とびきりの日傘を買ってきえたいなお祈りみたいなたんぽぽの汁

消えたいが消えてもいいなにかわるたびつくし生えるよ宇宙いちだよ

まみちゃんはまみどりちゃんって花びらが靴に踏まれてとうめいになる

あったらいいな晴れてるのに雷がなる日洗ってなんども使える言葉

生きているときしか遺書は書けなくて洗濯物のにおいのおばけ

菜の花はこの世の花じゃなくてきみの女の子みたいなながい睫毛

テレキネシスとサイコキネシス 酒気帯びの東京の橋で立ったまま泣いた

喋りながらシャンプーするから口の中甘くて春のさよなら無双

ピンぼけの写真を消さずに生きてきた春のまひるの横断歩道

指でするくちづけ 花の降る中をきみからぬすんだ道路標識

花のような花火のような火にふれてこの世でことばと声が重なる

帰るべき季節ぼくらに見つからず使いまわした缶蹴りの缶

病院にきみといきたい 折りたたみ傘のちいさな相合傘で

風に船 きみを思えばきみに吹く風にわたしも吹かれちゃうよな

叶えたいことが決まってなくたってしていいんだわ春のお祈りは

春のこの世を走れば春の肋骨にひかり絡まる火の日曜日

ゆうれいになってもふくらませたげるよわたしに投げる水風船を

騎馬戦をひとりとひとりでするような 宇宙の詭弁できみをおもった

バラまつり みずから望んだ結末に傷つく日々に慣れたなんて嘘

立ったまま抱きしめてくれる わたしはいつも心を事故物件みたいにおもって

かさぶたを触るみたいに生きてゆくきみは現世のあとの現世を

産声のようにピアノを弾くきみの小さな骨に催涙花ふる

二回目は綿毛バイクで迎えるわ髪留めひかる少年のきみ

逆光の日には光の凧あげな この世の果てのとこしえの丘

たましいにエアタグつけて待っとって 風が吹く 天国のくもりの日