牢屋のおやつ2 ぷるぷる看守がこわい編
2024/06/20

あとがき
語り手のいない丘まで逃げましょう 声はかすかに乳房を帯びる
便箋を買って一枚減らしたら(そうして二度と減らなかったら?)
真夜中の科学館には剥製と立て籠もり犯 とある馴れ初め
〒汽水域‐ こおりのきおく ストーブでくもる窓辺のふたりきり宛
その肌は純石鹸を包み込む紙に似ていて破かれていく
満月を見上げるように見下ろしたプラスチックの芋虫の国
ゆるすほどぬかるんでいくゆきどけをきみならどうしたろう、裁断機
ふりむけば深まる誤読 ぶどう酒の味を世界は間違えている
木製のスプーンだけでジャムになる砂をすくって差し出した午後
もういっぺんお城って呼んでよ 体温でクローゼットは窒息しそう
靴下が増えちゃうような洗濯を手とり足とりおそわっていた
(ああこれも童話ねきっと)めぐらない月に甘えて延びた航海
終わったの、終わったことがはらわたの奥で燈火を揺らしているの
髪留めは盗まれたまま 結末はほどかれるまま風にひろがる
裏表紙閉じたあとにも追伸のように汽笛は鳴っていました
糖避
高熱のあたしはきっと語りだす どろり フォンダンショコラのように
ポルボロンぽるぼろんって信頼がこぼれていって昼の脱衣所
花鋏(花束になる練習をするのはいつもにんげんでした)
さむいのはあまいせいだよ白い息ぽとぽ夜ふけの現実糖避
標識が腹パンされてへこんでてわるくないのに 痛くないのに
しとやかな恐竜ポーズしてみせる今日もごくろうさまです除雪車
あたためるほどにとろける遠吠えのひらがなはやや溶けやすい文字
新雪がくるわないようひっそりと踏みつつフロランタンに犬歯を
貯水池に雨が溜まっていくようなお喋り たまにみぞれが混じる
べたべたになればなるほど誇らしいお団子雪合戦の開幕
葉痕にとりかこまれてにんげんを愛したことのない爪を噛む
霜焼けのゆびにホイップくちびるがみんなうしろめたいのに好きね
百均の防犯ブザー 歩きたい夜がごわごわしてるのなんで
うぐいすをうぐいす餅と見まちがう予感があたたかくてそれだけで、
何もかも譫言でした だとしてもテンパリングには本音が要る